おしり(臀部)の痛みには、筋肉や腱の使いすぎ、軽い炎症、姿勢や生活習慣の影響など、比較的よくみられる原因があります。
このような場合には、安静にしすぎず、無理のない範囲で体を動かしたり、姿勢や動作を見直したりすることで、血流や筋肉の状態、体の使い方が徐々に改善し、数日から数週間で自然に軽快することがあります。
一方で、骨や関節の変形、神経の強い圧迫、感染症、骨折、腫瘍などが原因となっている場合は、自然に十分な改善が得られることは少なく、経過をみるだけでは十分でないことがあります。
このような状態では、放置すると痛みが長引いたり、症状が悪化したりすることがあります。
そのため、「様子を見てよい痛み」と「早めに受診すべき痛み」を見極めることが大切です。
おしりの周囲には、多くの筋肉、骨盤や股関節、坐骨神経など、重要な組織が集まっています。
このため、原因が一つとは限らず、いくつかの要因が重なって痛みが生じることも少なくありません。
以下に、代表的な原因を説明します。
1)筋肉や腱が原因の痛み(最も多いタイプ)
長時間の座り仕事、急な運動量の増加、片側だけでの荷物の持ち運び、冷えや強い緊張が続くことなどがきっかけになります。
おしりの筋肉(大殿筋、中殿筋、梨状筋など)が硬くなり、筋肉への負担や血流の低下、微細な損傷などが重なることで、炎症や痛みが生じます。
動き始めや立ち上がりで痛みが出やすく、動かすと重だるさを感じるのが特徴です。
休むと少し楽になることが多く、比較的自然に軽快しやすいタイプです。
2)坐骨神経が刺激されることによる痛み(坐骨神経痛)
坐骨神経は腰から足先まで伸びる太い神経です。
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などによって神経が圧迫・刺激されると、坐骨神経に沿って痛みやしびれが生じます。
坐骨神経痛は、こうした神経の刺激によって起こる症状の総称です。
おしりから太もも、ふくらはぎにかけて広がる痛み、ビリビリするしびれ、電気が走るような感覚が特徴です。
前かがみ、くしゃみ、長時間の座位などで悪化しやすい傾向があります。
しびれが強い場合や足に力が入りにくい場合は、医療機関での確認が必要です。
3)骨盤の関節が原因の痛み(仙腸関節)
仙腸関節は骨盤の後方に位置し、体重を支える重要な関節です。
片側だけに深い痛みを感じることが多く、立ち上がりや階段の昇降、寝返りで痛みが出やすくなります。
妊娠・出産、育児、重い物を持つ動作、スポーツなどがきっかけになることがあります。
4)股関節やその周囲の炎症
変形性股関節症や滑液包炎などが関係することがあります。
横向きで寝たときに痛みが出たり、歩き始めや長く歩いたときにつらくなることが特徴です。
5)皮膚や皮下組織のトラブル
打撲やあざ、できもののほか、帯状疱疹では皮膚症状が出る前に痛みだけが現れることもあります。
6)まれですが注意が必要な原因
感染症、骨折、腫瘍、血栓、妊娠後期の骨盤帯痛などがあります。
血栓は下肢の片側の腫れや熱感を伴うことが多く、単なる筋肉痛とは経過が異なります。
頻度は高くありませんが、見逃してはいけない原因です。
次のような場合は早めに医療機関を受診しましょう。
・足の力が入りにくい、または徐々に弱くなってきている
・尿や便が出にくい、または漏れてしまう
・安静にしていても激しい痛みがあり、夜も眠れない
・発熱、悪寒、赤く腫れて熱を持っている
・しびれが足全体に広がっている
・体重が急に減った、がん治療中である
・転倒や事故のあとから痛みが出た
・2~3週間以上改善しない、または悪化している
医療機関では、症状の経過やきっかけを詳しく確認し、神経の検査を行います。
必要に応じて、レントゲン、MRI、血液検査などが行われます。
重大な病気が否定できるだけでも、安心につながります。
危険なサインがない場合に自分でできること
痛みのない範囲で体を動かすこと、30~40分に一度は立ち上がること、入浴などで温めることが役立ちます。
明らかな腫れや熱感がある場合は、短時間の冷却を行います。
荷物を片側だけで持たないなど、日常動作にも注意します。
鍼灸について
鍼灸では、こり固まった筋肉、経穴、痛みの引き金となっている部位に対して、鍼やお灸で刺激を行います。
筋肉の緊張をゆるめ、神経の興奮を落ち着かせ、血流や筋の働きを調整し、体の動きや姿勢が保ちやすい状態を目指します。
その結果として、腰やおしりの重だるさが軽くなる、坐骨神経のピリピリ感がやわらぐ、回復しやすい体の状態を整える、といった効果が期待されますが、効果には個人差があります。
妊娠中の方、出血しやすい方、抗凝固薬を服用している方、強い痛みやしびれ、発熱がある場合は、必ず事前に鍼灸師へ伝えてください。
まとめ
臀部の痛みは、筋肉、関節、神経など複数の要因が関わって起こります。
危険なサインがある場合は医療機関を受診し、それ以外の場合は姿勢や生活習慣を整えながら、鍼灸を含めたケアが痛みの軽減や再発予防に役立つことがあります。
痛みが軽く、日ごとに和らいでいる場合は経過観察が可能なこともありますが、痛みが強く続く場合や、しびれ・力の入りにくさを伴う場合、日常生活に支障が出ている場合には、無理をせず医療機関に相談しましょう。