腰痛は、世界中で非常に多くの人が経験する症状の一つです。
世界保健機関(WHO)や国際的な疫学研究では、腰痛は「生活に支障をきたす主な原因の一つ」とされ、世界で数億人規模の方が腰の痛みに悩んでいると報告されています。
多くの場合、腰痛は命に直接関わるものではありませんが、まずは腰痛にはいくつかのタイプがあることを知っておくことが大切です。
腰痛の主な種類
腰痛は大きく2つに分けて考えられます。
原因がはっきりしない腰痛
腰痛の約8〜9割は、画像検査などを行っても明確な病気が特定できない「非特異的腰痛」と呼ばれるものです。
筋肉や関節への負担、姿勢や動作のくせ、体の使い方、活動量の変化などが複合的に関係して起こると考えられており、いわゆる「機械的腰痛」と重なる場合が多いとされています。
このタイプの腰痛には、
・体を動かしたときに痛みが変化する
・安静にすると比較的楽になる
・時間の経過とともに自然に改善していくことが多い
といった特徴があります。
日常生活の工夫や運動、姿勢の見直しに加え、必要に応じて理学療法や鍼灸などの補助的なケアが役立つことがあります。
病気が原因となる腰痛
一方で、頻度は低いものの、特定の病気が原因となって腰痛が生じる場合もあります。
このような腰痛は、全体のおおよそ1〜3%程度と報告されています。
原因としては、
・がんの骨への転移
・背骨や椎間板の感染
・骨粗しょう症による骨折
・馬尾症候群
・大動脈の病気
・内臓の病気に関連した痛み
などが挙げられます。
これらは頻度こそ低いものの、見逃すと重大な結果につながる可能性があるため注意が必要です。
腰痛は便宜的に大きく2つに分けて説明していますが、境界が重なり合う部分も多く、必ずしも100%に分類できるものではありません。
注意したい腰痛のサイン
次の症状がみられる場合には、重大な原因が隠れていないか確認するため、医療機関への受診が勧められます。
・休んでも痛みが改善せず、夜間に痛みが強い
・理由の分からない体重減少がある
・発熱や悪寒、しびれ、筋力低下がある
・がんの治療歴がある、免疫を抑える薬を使用している
・転倒や強い衝撃後に強い痛みが出た
・高齢の方で軽い転倒後から痛みが続いている
・足のしびれや力の入りにくさがある
・排尿や排便がうまくできない、失禁がある
・腹痛や吐き気を伴う
・血尿や排尿時の痛みがある
特に、排尿や排便の異常を伴う腰痛は、緊急対応が必要になることがあります。
気になる症状がある場合は、自己判断せず専門家に相談しましょう。
不安なときは、一人で抱え込まず、医療機関や信頼できる専門家に相談することが重要です。
腰痛は誰にでも起こりうる症状であり、ほとんどの場合は時間の経過とともに改善します。
画像検査で椎間板ヘルニアなどの所見があっても、それが必ずしも痛みの原因とは限りません。
症状の経過や体の状態を含めて総合的に判断することが大切です。
鍼灸と腰痛について
鍼灸は、主に非特異的腰痛に対して補助的な治療として用いられることがあります。
腰痛を根本的に治すものではありませんが、痛みの軽減や体の動かしやすさの改善を目的として行われます。
研究では、鍼灸刺激が筋肉の緊張や自律神経の働き、痛みの感じ方に関わる神経系に影響する可能性が示され、痛みが和らいだり日常生活が送りやすくなると感じる方が報告されています。
WHOや一部の国際的な診療ガイドラインでは、慢性的な非特異的腰痛の治療選択肢の一つとして鍼灸が挙げられています。
ただし、効果の現れ方や持続には個人差があります。
がんや感染、骨折などが疑われる腰痛に対しては、鍼灸のみで対応することは適切ではありません。
鍼灸を取り入れる場合は、医療機関での評価を受け、現在の治療を中断せず、体調の変化があれば速やかに相談しながら無理のない形で行うことが望まれます。