鍼灸の実技: 第2節 有痕灸の種類

鍼灸の実技:序・目次


第2節 有痕灸の種類


以上は普通一般の艾炷の作り方、つけ方、処置の仕方であるが、有痕灸を、1.透熱灸、2.焦灼灸、3.打膿灸に区別する(富永勇氏分類)ことにより、少しく、その施灸の実技が異る。

1.透熱灸
 透熱灸は普通灸といわれているものである。その名のごとく、熱を透す目的で施す有痕灸である。神経、血管、圧痛点、経穴に据える灸である。たとえば、面庁に合谷穴にすえる。痔疾に孔最穴、百会穴にすえる。胃痙攣に胃愈穴、梁丘穴、三里穴にすえる。腹痛に裏内庭穴にすえるなどである。≪後藤艮山五柱灸≫に『疾喘吐衂腸風下血するが如きは即ち臓腑に病あり、宜しく、温動して之を動ずべし、労熱、盗汗、痃癖痞塊鬲噎反胃狂乱癩痛の如きは病の因る所深し灸灼最も多くして根底に徹せしむべし、日日月月に数十乃至数万の灸を据えべし、これを徹底と言う』と記載されてあるが、これも透熱灸である。

2.焦灼灸
 焦灼灸というのは施灸部を焦灼破壊する目的で施灸する灸をいう。普通よく使われるのは疣、魚の目などの上にすえて、土壌死、焼却を目的とするのである。この外、癰、庁、皮下蜂窼織炎、狂犬、鼡、毒虫、蛇などの咬刺による傷ロ、打撲、裂口などの局部に施灸する方法である。
 これは昔から用いられていた。≪素問・骨空論≫に『犬噛むところの処に灸すること三壮』とあり、≪内科秘録≫に『本邦にて古く癰疽に灸す。また、王侯貴人をも憚らず』とある。東南陽の≪砦草≫に『病犬に喰われれば多く灸して狗牙の毒を焼尽し、其の後解毒丸を用ゆべし』とある。疣や 魚の目に据える時は、艾炷の底面を疣や魚の目の表面一杯にゆき亘るようにして、硬くひねって施灸する。壮数は多く据えるのであるが、灸の痂皮がてきると熱く感じなくなるので、どんどん据える。痂皮が剥げると同時に疣も取れるのである。創ロ等に灸を据えるのはさも熱そうに考えるが、事実は考えた程熱くないものである。その作用は①止血、②防腐、③病的組織を破壊し、その部の緊張をゆるめる。①分界線を早く生ぜしめる。⑤排膿を助け、新瘡面の発生を促し、癒合を早からしめる。⑥抗体をふやす。
 焦灼灸は烙鉄と同じ意義を有するとされている。
                    
3.打膿灸
 打膿灸は灸を据えて、灸痕の化膿を促し(通常、相撲膏をはる)、排膿(打膿)させる目的で施す灸をいう。膿汁ぱかりでなく、漿液の排出でも、このようにして出すことを矢張り、打膿灸という。               
 通常、直径1.5~2cmの太さの艾の棒 (まき灸にする艾の棒を)つくって、3力月ぱかり置く。これを2cm位に切って、皮膚に貼じ、点火して皮膚を火傷させ、その灸痕に相撲膏をはるのてある。巻灸をつくって日が浅いと、艾が点火すると広がるので、3力月位経ったものを使うのである。が、時として、散艾を中指頭大位に固めて皮膚上に燃焼さすこともある。或は軟らかく固めて燃焼さすこともある。壮数は一壮のこともあり、三壮位すえることもある。いずれの場合も艾が皮膚に燃え移る時は、両手の小指側手弯部でもえている艾の周囲を強圧するがよい。こうすれば、皮膚の引きつりが、やわらぎ、施灸後の苦痛を軽減することができる。≪発泡打膿灸≫に『発泡打膿は一種の衝動となっで潜結壅滞せる血液を誘発し、却って、その部の神経、及び血管の衰幣せるを運営し、墳起逞発する作用を起すものである』とのべている。打膿灸もこの理に基ずくものと考えられる。                                                        
 打膿灸を施す穴所は、病気とこれを行う術者によって異なるが、凡そ次のようである。
①青地博士の横根返しの灸穴は臀部のほぼ中央 (グロシ氏三角点)である。
②弘法灸の穴は樫田、原田氏の報吉では曲垣、大杼、肩外、風門、肺愈、肝兪胃兪、腎兪である。
③打膿打抜きの灸として、懸鐘と三陰交、膏肓、臂臑、腰眼、外膝眼、三陰交、承山に施灸する。
④後藤艮山の≪後藤艮山五極灸≫には、『臁瘡、痔痒、陰虫破瓜、疥癬、癜風、小尻白禿の如きは瘀血皮膚にあり、宜しく、表熱を開くべし』とある。これを開表というた。