鍼灸の実技:第11節 中国、欧州の現行刺鍼法

鍼灸の実技:序・目次


第11節 中国、欧州の現行刺鍼法


 日本の刺鍼法は管鍼法が、圧倒的に多い。撚鍼法は極めて少数の人によって行われており、打鍼法の手技を行う人は先ず無いといってもよい。
 中国の刺鍼法は撚鍼法及び挿入法ともいうべき手法て施鍼されている。撚鍼法は既述したので、挿入法ともいうべき刺鍼法についてのべる。

1.中国の挿入法

 これには押手からして、特殊である。押手の拇指の爪をもって、穴処を充分下圧する。そうすると爪のあとが皮膚にのこる。その爪のあとに、中国流の鍼の鍼尖をあて、搓るように撚る(この時は撚鍼法といってもよい)かわりに、静かに下圧するのである。即ち、蚊虻の状の如くするのである。この際押手も少しく運動して、刺手の運手を助けるのである。つまり、刺手と押手が同時に操作することになる。時として、押手が皮膚から離れることもある。しかし刺痛を感じさせてはならないのである。練習が充分でないということである。皮膚を穿皮してから後の運手は一般的の刺法は補瀉によってことになるが、結局は、補瀉の手技を行うということになる。

2.欧洲の刺鍼法

 普通現行使用されている欧洲の鍼は、九鍼のうち『鍉鍼』(類経図翼の鍼鋒の附いている形のもの)か、『大鍼』の尖端2~3mm位の長さの鍼を用いていると考えてよい。
 その刺し方は、いきなり、鍼尖を皮上の穴所を目がけて突き刺すのであるが、これは時として、劇痛を感じ患者は悲鳴をあげることがある。
 このような刺痛を感ぜしめないために、著者(柳谷)は東洋の爪法による刺法を、フランス、ドイツの鍼医に教えて来た。その方法は次の通りである。
 まず押手の爪を穴所にあて、充分下圧する。その下底の圧力を緩めず、鍼を爪床部に添える。患者をして深呼吸をさせるか、刺鍼部が上肢でないならば、左手と右手をお互いに、つかませて握らせる。そして、その握った手に力を入れさせるようにする。これは気分転換ともなり、注意を刺鍼部からそらすことともなる。こうしておいて術者は押手の爪を急速に上げ、下圧の力を減ずる。刺手の鍼の位置は、前のようにして、位置を変えぬようにする。すると、皮肉はその固有の弾力で上にあがってくる。つまり、鍼尖の方にむかって、皮肉が刺さってくるわけであり、この時、刺鍼を少しく下方に押し気味にすれば、猶容易に、無痛に刺入できるのである。
 刺そうとする、鍼の深さを2mm又は3~5mmと、あらかじめ決めておくなら、刺入までのところまで、刺手の拇指と示指で鍼を把持しておけば、思うところまで刺入できるものである。以上の指捌きを1挙動でやるか、2、3挙動でやるかは身体の場所によって、ことなるので、その場、その場で考えて行うべきである。ドイツ、フランスの鍼法はこのように刺入した鍼を留置して、時々生体反応(脈、刺鍼部の状態)を見て、鍼が作用しているか、いないか測定するのである。穴に補穴、瀉穴を区別し、鍼に補と瀉を考えて刺すのである。時として、金鍼を補に銀鍼を瀉に使っているものもある。
 次にその方法について2、3述べることにする。

1)胃部圧迫、疼痛、
a.厲兌(瀉針)|
b.衝陽(補針)|留置鍼
c.外関(瀉針)|

2)腓骨々折による疼痛
a.丘墟(瀉針)
b.疼痛部に銀鍼にて瀉針す

3)不眠、眩暈、頭重、高血圧、
a.小海(金針にて補針)
 この少海は「生命の喜び」という別名があり、8日後には笑顔が出るようになったと報告されている。

4)帯状ヘルペス
 フランスのA、R氏、9年来悩み*のもので1年に1回は必ず第7肋間腔に定型的な水泡が出来、痛みが激しかった。脈診ては腎実、肝脾虚の脈であったものに、
a.湧泉(銀針置鍼)
b.曲泉(金針置鍼)
c.太都(銀針置鍼)
 55分間置鍼、翌日は無痛になった。36時間で訴えは消滅した。

5)肋間神経痛
a.曲泉(金鍼置鍼)
b.少衝(金鍼置鍼)
 45分間置鍼、直後軽快した。翌日は、痛点に刺鍼3日間で全治した等である。

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