鍼灸の実技:序・目次

 『鍼灸の実技』は昭和34年に柳谷素霊により著された名書です。鍼灸の実践的な内容が分かりやすく体系的にまとめられています。鍼灸の道に進む入門者向けの書ですが、広く一般の方にも、この世界を知るために良いかもしれません。しかし現在は絶版となり、入手が困難です。この書は著作権が切れましたので、この機会にその内容をインターネットにて公開いたします。


鍼灸の実技



「鍼灸の科学化」が、関係識者の間で、叫ばれはじめてから既に久しい。長い伝統と、歴史の中に培われ、めざましい治効を誇り、民衆の中に生き、民衆とともに歩んでぎた銭灸は、経験施術であるという理由のために、医学の別道として冷遇されてぎた。経験だげでは、科学ではないからである。基礎も、臨床も、その治効はすべて実験の過程を経て実証され、体系づげられてこそ真の科学といえるのである。その意味では、経験的な要素の多い銭灸施術が、「鍼灸科学」として立派に大成し、学問的な体系を確立する日は、まだ先のことであろう。真の鍼灸科学、建設への道は険しくとも、このことは私どもに負わされた至上の命題であり、果さなければならない責任なのである。任重く、道遠しとはいえ、限りなく愛する東洋医術、鍼灸の科学化を、最高の指標として茨の道をひたむぎに精進する私どもが、抱く夢「鍼灸の科学」を、本書の表題としたとしても、その真情は大方諸賢に御理解いただげることと思う。また本書の理論編、実技編を通じ、一貫して流れるものは、私どもが研究への信条とする、「温故即知新」の精神であることも、おくみとりいただければ幸いである。「古くして新しい施術、鍼灸」の意義を明らかにすることこそ本書の命題でもあった。そのために古鍼灸法と現代鍼灸法との関連、新しい実験対象となるべき古鍼灸法の中の経験的要素、最近における新しい医学の歩みと、鍼灸施術、一連の医学の研究業績から論じた鍼灸治効のメカニズム等の条下におげる解説には、最も意を注いで筆を進めたつもりである。本書はまた学校、養成施設の、はり、きゅう科用教本としての使命も負わされている。そのために文部省編、盲学校高等部理療科指導書(試案、昭和28年度)の指導単元に準拠し、教本としての体系を整え、文体については、とかく専門書が陥りやすい難解な表現を極力さけ、内容についても、術語や用語をでぎるだけ日常用いる語になおして関係読者の理解に役立ち、親しみやすい教本でもあるように配慮した。幸い私どものこの配慮が実を結んで、鍼灸施術を専攻する初心者のためには、科学化への道を進む鍼灸施術の概観が、体系だって学習でき、豊富な臨床体験を持つ「はり師」「きゅう師」有資格者のためには、臨床上のよぎ参考書として、活用され、基礎的な学理や、臨床実技の改善進歩に稗益するところがあれば私どもの望外の喜びである。おわりに本書理論編、実技編を執筆するにあたり、斯界におげる関係古文献、斯道先覚諸氏の著書、研究論文、論説等数多くの文献を参考とし、一部は文例として引用させていただいた。これら先覚諸氏の輝しい業績にたいし、深甚なる敬意と謝意を表して筆をおく。

昭和34年3月3日著者

実技篇


目次


第I章 はりの実技


第Ⅱ章 きゅうの実技


第4節 灸の補瀉

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