食欲不振(食欲がない)

はじめに


 食欲が無くなったり低下することを食欲不振と言います。食欲不振にはいろいろ原因があります。慢性的なものと比べ、急性のものは注意が必要ですが、症状が食欲不振だけであることはまずないので、それ以外の症状を診ていかねばなりません。


原因


・心理社会的

 誰もが経験したことのある、あるいはする可能性のある食欲不振です。大切な愛する人との別れ、長年心血を注いできた仕事を失うこと、介護や障害、DVなど家族に問題を抱えている、信じていたものからの裏切り、いじめ、価値観の崩壊など良くないと思われるものだけでなく、いろいろな仕事、芸術的活動、学術研究活動、論文の執筆、結婚式の準備など、何かしらへの熱中も食欲を低下させることがあります。


・精神医学的

 神経性食欲不振症、うつ病、人格障害、転換性障害、統合失調症、強迫性障害などの精神疾患により体重が減少することがあります。しばしば慢性進行性の疾患と合併します。高齢者ではうつ病が原因である頻度が高くなります。


・薬理学的 

 たばこやアルコール、お茶やコーヒーの過剰摂取、サプリメントなども食欲不振の原因となります。また覚せい剤や麻薬などの薬物だけでなく、治療用の薬物、セロトニン再取り込阻害薬(SSRI)や抗ヒスタミン薬、抗けいれん薬なども原因となります。


・病理学的 

 急性の食欲不振には注意が必要であり、随伴症状や全身症状を診ていかなければいけません。


 ○新生物(悪性リンパ腫・結腸癌・肺癌など)

 ○内分泌(糖尿病・アジソン症候群・低ナトリウム血症・高カルシウム血症・甲状腺機能低下症など) 

 ○感染症((ウイルス性肝炎・ヒト免疫不全ウイルス・結核・腸管原虫症など)

 ○慢性疾患(貧血・閉塞性肺疾患・慢性腎不全・うっ血性心不全・パーキンソン病・アルツハイマー型痴呆・多発性硬化症など)

 ○炎症性(膵炎・炎症性腸疾患・消化性潰瘍・胆石症・虫垂炎など)

 ○その他(歯の状態不良・嚥下困難・過敏性腸症候群など)


 食欲不振を訴える人の50%には体重減少があります。各種のバイタルサイン・起立時の血圧、体温、歯や口中、嚥下状態、甲状腺、喉の状態、不整脈、お腹や大便の状態、皮膚の色(黄疸やチアノーゼなど)、うぶ毛(神経性食欲不振症で見られる)、嗅覚・味覚の異常、筋力や運動の状態、痴呆や精神状態などに何らかの異常があるか注意しましょう。



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