大腿部痛

 大腿部痛には、大腿部外側皮神経症候群/感覚異常性大腿神経痛・大腿四頭筋挫傷/断裂・膝屈曲筋挫傷・転子滑液包炎・腰の神経根障害(L2/L3)/腰部椎間関節症候群・腸腰筋滑液包炎・腸腰筋腱炎・腸腰筋症候群(ばね股症候群)・股関節内転筋挫傷・腸脛靭帯症候群・大腿部の深部静脈血栓症・絞扼性ニューロパチーなどがあります。


・大腿部外側皮神経(LFCN)症候群または感覚異常性大腿神経痛

 腸骨稜手術、子宮摘出術、腹腔下ヘルニア縫縮術、大動脈弁手術、冠動脈バイパス手術に起因するLFCNの損傷、糖尿病性ニューロパチー、締めつける衣類、窮屈に着ること、幅広の重量挙げ用ベルト。


・大腿四頭筋挫傷または断裂

 大腿四頭筋は外側広筋、内側広筋、中間広筋、大腿直筋からなる。どの筋肉にも挫傷(または断裂)が起こり得るが、最も多いのは大腿直筋である。フットボール/サッカー選手、スケート選手、ランナー、運動プログラムがウォーキング主体の高齢競技者で生じる。


・膝屈曲筋挫傷

 膝屈曲筋は大腿背側部に伸びる長い筋肉である。脚の引き戻しや膝の屈曲の際に働くため、ランニング、キック、ジャンプの時に損傷しやすい。通常、筋肉断裂時に大腿背側部で「ブチッ」と切れる音が聞こえるであろう。


・転子滑液包炎

 4つの滑液包のうち1つ以上の炎症は通常、大転子周囲で認められる。大転子2つと小転子1つの計3つは一定である。これらの滑液包の働きは、大臀筋腱前部が大転子の上を通り腸脛靭帯(ITB)に入り込む時に大臀筋腱前部の滑動を良くすることである。この滑液包に炎症や刺激が生じると、転子滑液包炎の症状を来す。一般に股関節、膝関節、腰部の問題による歩行障害を併発する。肥満、妊娠。


・腰の神経根障害(L2、L3)、腰部椎間関節症候群

 脊柱から出る感覚/運動神経は、椎間孔または椎間関節の関節炎による刺激や絞扼、また脱出椎間板による圧迫を受けると考えられ、大腿外側部に関連した疼痛が生じる。


・腸腰筋滑液包炎/腱炎・腸腰筋症候群(ばね股症候群)

 鼡径部内側や大腿部に疼痛とともにパチッという音が生じる。急性損傷と酷使が2大原因である。急性損傷では腸腰筋の伸長性収縮や直接的な外傷が生じる。使いすぎによる損傷は股関節を繰り返し曲げる動作や大腿部を外転させる動作で生じる。ダンサー、体操選手、チアリーダー、ランナーに見られる。


・股関節内転筋挫傷

 寛骨前面から大腿部内側に走行する筋肉の打撲傷または挫傷。これらの筋肉は、ランニングを含むすべてのスポーツ活動中、股関節と脚を安定させる。鼡径部の疼痛と硬直は朝とスポーツ活動の開始時に発生する。ウォーミングアップをすると治まるが、スポーツ活動を行うと再び発生することが多い。


・腸脛靭帯症候群

 腸脛靭帯が大転子上を通る時に外側股関節、大腿部、膝関節に疼痛とともにパチッという音が生じる。最も多いのは膝関節の使いすぎ症候群である。これは屈曲/伸展時に腸脛靭帯と大腿骨外側顆が摩擦を繰り返すことによって発生し、炎症反応を招く。


・大腿部の深部静脈血栓症

 ふくらはぎや大腿における片側の熱感、紅斑、腫脹、圧痛が特徴で、その領域では大きい静脈が血栓により閉塞される。


・絞扼性ニューロパチー(肋下神経と腸骨下腹神経の外側皮枝)

 近位大腿前部に疼痛を引き起こし、腹部外科手技(例:虫垂切除術やヘルニア縫縮術)後に発生する。



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